白内障関連の記事

( 2019.3.6 夕刊フジ より)

白内障の恐怖! 60代で7割、70代で8割も…

健康長寿の実現のために必要なこととして、「足腰の強化」を挙げる人は多い。たしかにその通りなのだが、同じくらい重要なのが「目の健康」である。高齢者の骨折の原因となる「転倒」は、多くは視力低下や視界不良によるもの。中でも当人が気付きにくい「白内障」は、定年世代にとって特に要注意の眼病なのだ。

 目のレンズ機能を担う水晶体。本来は透明のレンズなのだが、加齢とともにその成分であるタンパク質が白く濁ってくる。これが白内障だ。

 老眼と並ぶ典型的な目の老化現象とされ、60代でおよそ7割、70代で8割、80歳になると99%の人がこの病気にかかっていると言われている。

 症状を知るためには、チェックリストを参考にしてほしい。定年世代の2人に1人以上の確率で白内障と診断される、ということを考えると、穏やかではいられなくなるはずだ。

 ただ、近年は白内障の手術法が確立されている。水晶体の表面を切開し、中の濁った物質をレーザーや超音波で久代から吸う。空いたスペースに人工眼内レンズを挿入するという手術だ。文字で読むと恐ろしい手術に感じられるが、眼科の手術としては珍しいものではなく、多くの医療機関の眼科やクリニックでも行われている。

 そうは言っても「手術」。散髪してもらうような気分で受けるものではない。手術を受けるかどうかのポイントは?

「一つの基準となるのが、白内障があって、しかも矯正視力(メガネやコンタクトレンズをかけた状態での視力)が0・7を下回った場合。しかし、これとて絶対ではありません。本当に手術をすべきかどうかは、視力の低下具合だけでなく、患者ごとのライフスタイルによっても異なるものです」

 そう語る眼科専門医の平松類医師によると、ある程度は点眼薬で病気の進行を抑えることができるという。もちろん、早期のほうが手術の難度は低いが、どの段階で受けるかどうかは、医師と患者の話し合いで決めるべきもの。逆に、患者の考えや生活内容に耳を傾けることなく、むやみに、あるいは強引に手術を勧める医師には警戒すべきだろう。

 ちなみに白内障の手術は、歯のインプラント治療のように、「一度受けたけれど将来もう一度手術をする」という可能性はまずない。もちろん、人工眼内レンズもいずれは劣化する。しかし、60代で入れたレンズが使用不能になるほど劣化する前に、人生の終焉が訪れる。白内障手術は「一目一回」と考えていい。

 手術は片目ずつ、日帰りで行うことが多いが、入院施設のある医療機関であれば、患者の希望に合わせて数日間の入院に対応するところもある。多くは手術をした当日か翌日には視力が回復するが、病気の進行が顕著であるほど回復にも時間がかかる。

 「手術の前後で視力(度数)や見え方が大きく変わるので、慣れるのに時間がかかることもあります。車の運転をする人などは、ある程度余裕のある日程を組む必要があります」

 自身のライフスタイルも合わせて、医師とよく相談しよう。(中井広二)

 ■医療監修/平松類(ひらまつ・るい) 医師。昭和大学医学部卒業。二本松眼科病院勤務。昭和大学非常勤講師。医学博士。最新刊に『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SBクリエイティブ刊)

 ■白内障チェックリスト    

 □何となく見づらい気がする

 □テレビや映画の字幕が見づらい

 □離れた人の顔が分かりにくい

 □長時間の読書が疲れる

 □太陽の光がまぶしく感じることが多い

 □月が2~3個に見えることがある

 □以前と比べて色合いが違って見える

 □右目と左目で見え方が違う

 □階段の上り下りに不安を感じることがある

 □目がうっとうしく重く感じる

 ※1つ以上該当=白内障要注意、3つ以上該当=可能性が高い、5つ以上該当=要受診